
ドストエフスキーの短編「白夜」は、1848年に出版されて以来、ルキノ・ヴィスコンティ監督によりイタリアを舞台に、ロベール・ブレッソン監督によりパリを舞台に、ジェームズ・グレイ監督によりニューヨークを舞台にと、場所や設定を変えて描かれ続けてきた。ロベール・ブレッソン版の『白夜』(1971)は、4Kレストア版が3月7日から公開されるなど、今もなお愛され続けている。
孤独な青年の決して成就することのない恋を描く「白夜」を愛する者として、自分がどうしてこの物語に惹かれるのかを映画を作ることを通して探究したいと思った日活社員の太田慶(『狂える世界のためのレクイエム』『桃源郷的娘』)は、「白夜」に着想を得て、「白夜」とは違う設定・エンディングの物語を、紅葉の美しい秋の日本で撮影した。
「男にとって仕事は大事」と妻をなおざりにした結果、妻が去った主人公・泰明役は太田慶監督の全作品に出演している永里健太朗。永遠の愛を心から信じ、帰ってこない恋人を3年も待ち続けるヒロイン・美沙子を演じるのは、『ビリーバーズ』(城定秀夫監督)での熱演で注目を集めた北村優衣。フラッシュバックや主人公の妄想の中の妻・麻美を演じるのは、2024年末に舞台「応天の門」で初めて明治座に立ち“無敵のグラドル”から女優へと成長を遂げている高崎かなみ。美沙子の元恋人・慎一役で釜口恵太、主人公が過去の反省を吐露する相手・相沢役で藤岡範子、変化する主人公を見て行動を変える主人公の同僚・岡崎役でジョニー高山が脇を固める。
この度、6月6日(金)より池袋シネマ・ロサにて公開されるのを前に、ヒロインの北村優衣のオフィシャルインタビューが届いた。
・本作出演のきっかけをお教えください。
監督の太田さんが、私が以前出演した『ビリーバーズ』を観てくださって、美沙子役にピッタリなんじゃないかとオファーをいただきました。
・ルキノ・ヴィスコンティ監督とロベール・ブレッソン監督の『白夜』は、配信されていないですが、観たことはありましたか?原作は読みましたか?
ブレッソン監督の『白夜』の4Kレストア版が公開されたので、ちょうど1週間前に『白夜』を観に行きました。『永遠の待ち人』と繋がるところもありましたが、『白夜』は若い二人の話なので初々しい青春のように見えました。
ブレッソンの『白夜』のマルトは可愛らしい健気な少女で、待っていたのは1年だけれど、本作の美沙子は3年なので、確固たる信念という違いがあると思いました。美沙子は「愛とは?」「永遠とは?」を突き詰めて考えている人で、マルトと美沙子はそもそも求めているものが違うんじゃないかと思います。
原作も読みました。原作と方向性がちょっと違うから、あくまでも参考にしたという感じです。そちらでも恋人を待っている女の子は幻想的な感じで、そこは本作の美沙子にも近いところがあるので取り入れましたけれど、「ここは一緒にしたい!」という気持ちはなかったです。
・脚本を読んだ時の感想を教えてください。太田監督とは何か話しましたか?
難しかったです(笑)。ただ、太田監督がやりたいことが明確なのはお話ししていて伝わったので、監督のやりたいことをしっかり務めようと、ディスカッションをしました。『ビリーバーズ』が信仰宗教の話だったので、演じた副議長という役の一つのものを信じる眼差しは今作でも生かして欲しいと言われました。美沙子は、3年間恋人を待ち続けるという役で、自分の中での哲学があったり、言葉に強い力がある人なので、執念は意識して欲しいという話をされていました。
・演じた美沙子をどのような人物だと捉えましたか?
美沙子は、どんな人か読めなかったです。毎日彼との待ち合わせに行っていて、「仕事は何をしているのか?」と思うので、美沙子という人物を掘り下げるというよりも、太田さんの伝えたい言葉、哲学的な要素を一つ一つ遜色なく偏見なく伝えるということを意識しました。
泰明にとって美沙子がどういう存在であるべきかという方を考えました。
・「彼が来るまでずっと待ちます」と3年間待っている美沙子は理解できましたか?
できないです(笑)。個人的には「3年間同じ人を待ち続けるなんて無理!寂しい!」となってしまうので、無理ですけれど、美沙子は信じたいという気持ちが強いので、そこだけは絶対にブレないようにしました。観ている人も、美沙子がどういう人物かわからないと思うし、一人一人それぞれ捉え方があると思うので、その余白を残しながら、待ち続けるという信念だけは絶対にブレないように意識しました。
・3年間待っている恋人・慎一との出会いのシーンも、美沙子を演じる上でヒントになったのでしょうか?
そうですね。ときめきというか、ドキドキ以上の「運命だ」「この人しかいない」みたいな強い出会いのシーンになればと思いました。そのシーンの撮影は後半だったので、それまではまだ会えていない慎一を想いながら演じていました(笑)。
・哲学的なセリフが多かったですが、日常会話の作品と、どう違いましたか?
違うところばっかりでした(笑)。もちろん頭の良い方はパッと出てくるでしょうけれど、私はそうではなく、自然と会話して出てくる言葉ではないので、やり取りをするのが難しかったです。泰明のどういう言葉を受けて、この哲学の言葉が出てくるのかっていうのは、自分の中でも探りながらやっていました。泰明に言っているようで自分に言っているような言葉なので、そのバランスは意識しました。
・泰明役の永里健太朗さんと共演していかがでしたか?
寡黙な方でした。読めないところがまた泰明っぽくて。謎めいているところがあって、興味を持ったんですけれど、これ以上聞いてはいけないんじゃないかと思って程よく接していました(笑)。
・ロケ地はいかがでしたか?
お台場の近くで毎日朝から日が暮れるまで撮影したんですけれど、日が暮れる時がすごく綺麗で!環境としてすごくよかったです。
・本作の見どころはどこだと思いますか?
泰明と美沙子の出会いから徐々に日が経ち、関係性ができた中で迎えるラストです。泰明と美沙子の関係性が変わっていくところも見て欲しいですし、美沙子の強い意志がどこから来ているのかというのをそれぞれ考えられるんじゃないかなと思います。「自分はこんなに待てるかな?」だとか自分の中での「愛」とか「永遠」とかの定義みたいなものをわかりやすく美沙子は提示しているので、「自分だったらどう考えるんだろう」だとか、思考ができるんじゃないかなと思います。
・読者にメッセージをお願いします。
この映画が次いつ東京で劇場上映されるかわかりません。映画は映画館で観るのが一番だと思うので、大きいスクリーンでこの映画を楽しんでもらえたらと思います。
映画『永遠の待ち人』予告編
■トークイベント登壇者(予定)
6/6(金)
永里健太朗 北村優衣 釜口恵太 藤岡範子 ジョニー高山(以上、出演)太田慶(本作監督)
6/7(土)
永里健太朗 北村優衣 高崎かなみ(以上、出演) 太田慶(本作監督)
6/8(日)
金子修介(映画監督) 永里健太朗 (主演) 太田慶(本作監督)
※上映時間は決まり次第、映画公式SNSで発表

【あらすじ】
仕事中心で家庭を顧みることのなかった泰明(永里健太朗)は、妻の麻美(高崎かなみ)が去ったショックで鬱になり会社を休職しており、唯一の話し相手は、たまに手土産を持って様子を見にやってくる同僚の岡崎(ジョニー高山)と鉢植えである。
ある日、ぼんやり道を歩いていた泰明は美沙子(北村優衣)とぶつかり、美沙子がバッグから落としたナイフを拾う。泰明は美沙子の後を追い、ベンチで本を読んでいる美沙子に話し掛けると、美沙子は恋人・慎一(釜口恵太)を3年間毎日そのベンチで待ち続けているという。「彼はもうあなたのことを忘れてるんじゃないですか」と泰明は言うが、美沙子は「愛は信じることです」と強い意志で恋人を待ち続ける。美沙子に心惹かれた泰明は、美沙子のもとに通い始める。泰明は、美沙子が迷いなく話す愛の定義を聞く度、自分と元妻の関係を反省。もし美沙子が想っている人が自分だったら、と考え、「何か変えてみることでこの悪循環から抜け出せるような気がする」と提案してみるが…。
【クレジット】
永里健太朗 北村優衣 高崎かなみ
釜口恵太 藤岡範子 ジョニー高山
監督・脚本・編集:太田慶
撮影:河村永徳 照明:近藤啓二 録音:松川航大
衣裳:赤井優理香
ヘアメイク:清水彩美
配給:OTAK映画社
2023年/日本/カラー/16:9/83分
©太田慶
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